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取得財産の処分制限|補助金で買った設備は何年売れないのか

執筆:小嶋 譲司株式会社TOE 代表取締役 読了 約10情報時点:2026年7月19日
取得財産の処分制限|補助金で買った設備は何年売れないのか
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結論

  • 補助金で取得した財産(機械装置・器具備品・不動産など単価の高いもの)には「処分制限期間」があり、期間中は事務局の承認なしに売却・貸与・担保設定・廃棄などができません。
  • 処分制限期間は財産の種類ごとの耐用年数に連動して決まる仕組みが一般的で、具体的な年数区分は交付を受けた補助金の交付規程・財産処分承認基準に定められています。期間は制度・財産種別で異なるため、自己判断せず必ず当該規程で確認してください。
  • 期間中にどうしても処分したい場合は、事前に「財産処分承認申請書」を事務局へ提出し承認を得る必要があります。無断処分は交付決定取消・補助金返還につながるため、処分前の相談が必須です。

財産処分制限とは何か——補助金が税金である以上避けられない仕組み

補助金は事業者の自己資金ではなく、税金を原資とする公的な支援です。国や自治体が「この設備投資・この事業に使ってください」という条件付きで交付している以上、交付を受けた財産を補助目的に反して自由に処分されては困ります。そこで多くの補助金の交付規程には、一定期間、取得した財産を勝手に売却・譲渡・貸与・担保提供・廃棄・転用してはならないという「処分制限」の条項が置かれています。

この仕組みの根底には「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の考え方があり、各省庁・各補助金の交付規程がこれを踏まえて財産処分の承認手続きを定めています。ものづくり補助金事業再構築補助金のように高額な設備投資を伴う制度では特に重い意味を持ちますが、条項の有無・内容は制度ごとに異なるため、自社が受給した補助金の交付規程を必ず確認する必要があります。

実務でよくある誤解は「補助金をもらったら、その設備は一生自分のものだから好きにしていい」というものです。所有権自体は事業者にありますが、処分制限期間中は「承認を得ずに処分してはならない」という行政上の制約が上乗せされている、という理解が正確です。

処分制限期間はどう決まるか——耐用年数に連動する仕組みが基本

処分制限期間の長さは、取得した財産の種類ごとに定められた耐用年数を基準に設定されるのが一般的な考え方です。国税庁の減価償却資産の耐用年数等に関する省令に基づく耐用年数区分を参照し、財産の性質(建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具など)によって年数が変わります。

例えば一般論として、パソコンやサーバーのような情報機器は耐用年数が短く、建物や大型の生産設備は耐用年数が長く設定される傾向があります。ただし「何年」という具体的な数字は交付を受けた補助金の交付規程・財産処分承認基準、または国税庁の耐用年数表で個別に確認するべき事項であり、本記事では断定しません。処分を検討する段階になったら、まず自社が取得した財産の耐用年数区分を国税庁の耐用年数表で特定し、次に交付規程上の処分制限期間の定義に当てはめる、という2段階の確認作業が必要です。

確認すべき情報確認先
財産の種類ごとの耐用年数区分国税庁「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の耐用年数表
処分制限期間の具体的な年数・起算日交付を受けた補助金の交付規程・財産処分承認基準
処分制限の対象財産の単価基準(50万円以上など)同上(交付規程・交付要綱)
処分にあたる行為の範囲同上(財産処分承認申請書の様式・記載要領)

起算日についても注意が必要です。多くの制度では「補助事業が完了した日(実績報告書提出日や確定検査日)」を起算日とする考え方が採られますが、これも制度によって定義が異なるため、交付規程の文言を確認してください。

処分制限の対象になる財産・ならない財産

すべての取得物が処分制限の対象になるわけではありません。多くの補助金では、取得価格が一定額(単価50万円以上など、税抜きで判定するのが一般的)を超える「取得財産等」を対象とし、それ未満の消耗品的な購入物は対象外とする設計が採られています。

対象になりやすい財産の例としては、機械装置、生産ライン設備、業務用車両、建物およびその附属設備、大型のソフトウェア・システム一式などが挙げられます。一方で、消耗品費・外注費・委託費として計上した支出は、そもそも「財産」として残らないため処分制限の対象になりません。

ここで実務上重要なのは、「補助対象経費として計上したかどうか」と「処分制限の対象になるかどうか」は連動するが同一ではない、という点です。同じ機械装置でも、単価基準を下回れば対象外になることがあります。単価の算定方法(消費税込みか税抜きか、複数台をまとめて発注した場合の按分方法など)も交付規程・実績報告の手引きに定めがあるため、実績報告書を作成する段階で財産の一覧(取得財産等管理台帳)を確定させ、どの財産が処分制限の対象かを事務局との実績報告のやり取りの中で明確にしておくことが実務上のポイントです。

「処分」に該当する行為の範囲——売却だけではない

「処分」という言葉から売却だけをイメージしがちですが、交付規程における「処分」の定義はもっと広いのが一般的です。典型的には次のような行為が処分に該当するとされます。

行為具体例
譲渡・売却中古設備業者への売却、他社への譲渡
貸付・リース取得した設備を他社に貸し出す、リース契約に切り替える
担保提供金融機関からの借入の担保に設定する
交換別の設備と交換する
取壊し・廃棄老朽化・故障により処分する、スクラップにする
転用補助事業の目的以外の用途に使い始める(別事業所への移設を含む場合がある)
補助対象外への用途変更当初計画した事業以外の業務に主として使うようになる

ここで見落とされやすいのが「転用」です。設備を廃棄・売却したわけではなく、社内で使い続けているだけでも、当初申請した補助事業の目的から外れた使い方(例えば別の事業所に移設して別ラインで稼働させる、当初とは異なる製品の製造に使う)をすれば、処分に該当し承認が必要になるケースがあります。「まだ社内にあるから大丈夫」という判断は禁物で、用途や設置場所を変える前に事務局へ相談するのが安全です。

財産管理台帳の整備と保管義務

処分制限期間中、補助事業者には取得財産等を適切に管理する義務があります。具体的には、取得財産等管理台帳を作成し、財産の名称・取得年月日・取得価格・耐用年数・設置場所・処分制限期間の満了日などを記録し、善良な管理者の注意をもって管理することが求められるのが一般的な運用です。

管理台帳は一度作って終わりではなく、設置場所の変更や保守記録なども含めて随時更新し、事務局から管理状況の報告や現地確認を求められた際にすぐ提示できる状態にしておく必要があります。台帳の様式や報告頻度は制度ごとに異なるため、交付規程・実績報告の手引きに定めがあればそれに従い、定めがなくても自社で管理台帳を整備しておくことを強くおすすめします。理由は単純で、数年後に「この設備はいつ処分制限が切れるのか」を問い合わせられたときに、台帳がなければ耐用年数の特定からやり直すことになり、無駄な手間がかかるためです。

処分制限期間中に処分したい場合の手続き——財産処分承認申請

経営環境の変化により、処分制限期間中でも設備の入れ替え・事業所の統廃合・廃業などにより財産を処分せざるを得ない場面は実務上少なくありません。この場合、無断で処分するのではなく、事前に事務局の承認を得る手続きを踏みます。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 事前相談:処分を検討し始めた段階で、まず事務局(補助金の運営を担う協会・機構等)に処分の意向を相談します。承認が下りるまで実際の処分行為(契約・引渡し・廃棄)は行いません。
  2. 財産処分承認申請書の提出:処分したい財産の内容、処分の理由、処分の方法(売却・廃棄等)、処分による収入見込額(売却の場合)などを記載した申請書を提出します。様式は制度ごとに事務局が定めています。
  3. 審査・承認:事務局が処分の妥当性を審査し、承認可否を通知します。承認前に処分を実行すると、無断処分として扱われる可能性があります。
  4. 承認後の処分実行:承認を得てから売却・廃棄等を実行し、必要に応じて処分結果(売却額の確定など)を事務局に報告します。
  5. 納付が必要な場合の対応:処分により収入が生じた場合、次章で述べる納付義務の有無・金額を確認し、必要な手続きを行います。

この一連の手続きにかかる期間は事務局の審査状況によって変動するため、処分を急ぐ事情がある場合ほど早めの相談が重要です。「設備を売る契約が決まってから慌てて事務局に連絡する」という順番では手続きが間に合わないことがあるため、契約前の相談を徹底してください。

承認後に発生する返還・納付

処分制限期間中に財産を処分し、それによって収入(売却代金など)が生じた場合、交付を受けた補助金相当額を上限として、収入の一部を国庫または都道府県等に納付するよう求められることがあります。納付の要否・計算方法(残存簿価に基づくか、売却額に補助率を乗じるか等)は補助金ごとに交付規程で定められているため、一律の計算式をここで示すことはできません。

実務上のポイントは、処分によって想定外の収入が入ってきても、それを全額自社の収益として計上してよいとは限らない、という点です。財産処分承認申請の段階で、事務局から納付の要否・金額について案内があるのが通常の流れですので、処分の意思決定をする前に、納付が発生する可能性を織り込んで採算を検討する必要があります。

無断処分・管理不備が発覚した場合のリスク

処分制限期間中に承認を得ずに財産を処分した場合や、財産管理台帳の不備・虚偽報告が発覚した場合には、交付決定の全部または一部の取消し、補助金の返還(加算金を含む場合がある)、以後の補助金申請における不利な取り扱いなど、事業者にとって重いペナルティにつながる可能性があります。

特に注意したいのは、事業承継・M&A、廃業、事業所の統廃合といった経営上の大きな意思決定の中で、過去に受給した補助金の財産処分制限がすっかり見落とされているケースです。M&Aの相手先に事業譲渡する際、譲渡対象の設備の中に処分制限期間中の補助対象財産が含まれていれば、譲渡そのものが「処分」に該当し、事前承認が必要になることがあります。デューデリジェンスの段階で過去の補助金受給履歴と取得財産等管理台帳を突き合わせて確認しておくべき事項です。

実務チェックリスト

  • 過去に受給した補助金ごとに、取得財産等管理台帳を整備し、財産の耐用年数・処分制限期間の満了日を一覧化しているか。
  • 設備の移設・用途変更・廃棄・売却・担保提供・事業譲渡を検討する前に、対象財産が処分制限期間中かどうかを確認する運用になっているか。
  • 処分制限期間中の処分を検討する際は、契約・実行前に事務局へ相談し、財産処分承認申請の要否を確認しているか。
  • 事業承継・M&A・事業所統廃合を検討する際、対象資産に補助金取得財産が含まれていないか、デューデリジェンスの項目に組み込んでいるか。
  • 交付規程・財産処分承認基準の該当条項を、担当者の異動があっても参照できる形で社内に保管しているか。

処分制限は「補助金をもらったら終わり」ではなく、交付後も一定期間、税金の使途としての説明責任が続くことを意味する仕組みです。設備投資の意思決定を補助金ありきで進める事業者ほど、取得後の管理体制まで含めて計画に組み込んでおくことをおすすめします。個別の年数・金額・手続きの詳細は、必ず交付を受けた補助金の交付規程・財産処分承認基準、または事務局への問い合わせで確認してください。

よくある質問

Q. 処分制限期間は何年ですか?

A. 財産の種類ごとの耐用年数に連動して決まる仕組みが一般的ですが、具体的な年数は補助金ごとの交付規程・財産処分承認基準で定められています。一律の年数はないため、必ず受給した補助金の規程で確認してください。

Q. 処分制限期間中に会社を売却(M&A)する場合はどうなりますか?

A. 譲渡対象の設備に処分制限期間中の補助対象財産が含まれる場合、事業譲渡自体が処分に該当し事前承認が必要になることがあります。M&Aを検討する段階でデューデリジェンスに補助金受給履歴を組み込むことをおすすめします。

Q. 処分制限期間中でも承認を得れば売却できますか?

A. できます。事前に財産処分承認申請書を事務局へ提出し承認を得たうえで処分します。承認前に契約・引渡し・廃棄を実行すると無断処分として扱われる可能性があるため、契約前の相談が必須です。

Q. 無断で処分してしまった場合はどうなりますか?

A. 交付決定の取消しや補助金の返還(加算金を含む場合がある)、以後の補助金申請での不利な取り扱いにつながる可能性があります。発覚後は速やかに事務局へ相談し、事実関係を報告してください。

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