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番外編『世界の補助金から』

再エネを増やしたら電気代が上がった——ドイツEEG賦課金という副作用

執筆:小嶋 譲司株式会社TOE 代表取締役 読了 約9情報時点:2026年8月18日
再エネを増やしたら電気代が上がった——ドイツEEG賦課金という副作用

結論

  • 2000年4月1日に施行されたドイツのEEG(再生可能エネルギー法)は、再エネ発電事業者に系統接続・優先給電・20年間の固定買取価格を保証し、その原資を「EEG賦課金」として電力消費者から広く徴収しました。
  • 2017年の非特例消費者向けEEG賦課金は1kWh当たり6.88セントに達し、2011年時点の研究ではドイツの平均小売電気料金は世界最高水準の一つである約35セント/kWhと記録されています。
  • 2022年7月1日をもってEEG賦課金は廃止されました。代替財源として排出権取引収入と連邦予算が充てられ、平均的なドイツの家庭は年間約200ユーロの節約が見込まれるとされました。

EEGが始まるまでの道のり

ドイツの再エネ優遇の出発点は、1991年1月1日に施行された電力供給法(Electricity Feed-in Act)です。これは世界で初めてグリーン電力の固定価格買取制度を法制化したものです。

その後継として2000年4月1日にEEG(Erneuerbare-Energien-Gesetz)が施行されました。対象は風力、太陽光(PV)、バイオマス(コジェネレーション含む)、水力、地熱の5種です。発電事業者には系統への接続権・優先給電・技術と規模に応じた政府設定の固定買取価格(20年間保証)の三つが保証されました。EEGは国内外から「革新的かつ成功した」エネルギー政策として評価を受けており、特に風力・太陽光の急速な普及をもたらしました。ドイツの太陽光資源は相対的に乏しいにもかかわらず、高い成長が見られた点は国際的に注目されました。

Energiewende——EEGを包む政策の枠組み

Energiewende(エネルギーヴェンデ=エネルギー転換)の政策文書は2010年9月にドイツ政府によって公表され、立法支援は2010年後半に可決されました。目標は2050年までに温室効果ガスを1990年比で80〜95%削減し、再エネ比率を60%にすることです。ドイツは1990〜2014年の間に既に温室効果ガスを27%削減していました。

福島原発事故を受け、2011年6月6日に政府は原子力発電を橋渡し技術の位置づけから外しました。同年の「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」は「エネルギー転換の手段を用いれば10年以内に原子力フェーズアウトを完了できる」と結論づけました。ドイツは2023年に原子力を廃止し、石炭火力発電所については2030年までに、遅くとも2038年までに廃止する計画です。初期フェーズではロシア産化石ガスが原子力に代わる「安全で、安価で、一時的な」燃料と見なされていました。

賦課金の仕組み——誰が払い、誰が免除されるか

EEGの買取費用は「EEG賦課金(EEG-Umlage)」として電力消費者に課されます。送電系統運営者(TSO)が再エネ発電事業者にEEG規定の買取価格を支払い、その電力をEEX(エネルギー取引所)で市場価格にて売却します。この差額が賦課金として消費者全体に割り振られます。2016年時点のTSOは50Hertz Transmission、Amprion、Tennet TSO、TransnetBWの4社です。

電力多消費産業(製造業)と鉄道は大幅に免除の対象となり、最低で1kWh当たり0.05セントという極めて低い負担で済む仕組みが設けられました。国際競争力維持のための設計ですが、産業優遇の分だけ一般家庭への賦課金が上乗せされます。

2012年改正で「市場プレミアム」の概念が加わり、2014年改正では競争入札制への移行が始まりました。発電事業者は入札価格を自ら決め、平均月間スポット市場価格との差額をプレミアムとして受け取る仕組みへと変わりましたが、EEG賦課金はこの差額を補填するために廃止されるまで存続し続けました。

数字で見るEEG賦課金と電気料金

項目数値時点・備考
EEG賦課金(非特例消費者)6.88セント/kWh2017年
電力多消費産業の最低負担額0.05セント/kWh制度設計値
ドイツの平均小売電気料金約35セント/kWh2011年の研究
賦課金廃止日2022年7月1日
廃止による平均家庭の節約見込み年間約200ユーロ廃止時の試算
Energiewende 直近5年間の総コスト1600億ユーロ2019年連邦会計検査院認定

2011年の研究で記録された約35セント/kWhのうち、2017年の賦課金単体が6.88セント/kWhという水準は、消費者の電力コストに占める割合として相当大きなものです。

2014年・2017年改革——入札制への移行

EEG 2014(2014年8月1日施行)は、固定買取価格から入札制への移行を明記した最初の法改正です。地上設置型太陽光から先行導入され、政府が価格を設定するのではなく発電事業者が自ら入札するスキームへ移行しました。EEG 2017(2017年1月1日施行)で入札制が全面展開され、現行制度の基礎となりました。

ただしEEG 2017も批判を受けており、設定された導入廊下(deployment corridors)が長期的な気候保護目標を達成するには低すぎるとの指摘があります。ドイツ政府の目標は2050年までに再エネ比率を少なくとも80%にすることですが、輸送部門の電動化が進む場合には目標達成がより困難になる可能性が指摘されています。賦課金の消費者負担は入札制移行後も廃止まで続きました。

2022年7月——賦課金廃止という転換点

EEG賦課金は2022年7月1日をもって廃止されました。代替財源として排出権取引の収入と連邦予算が充てられることになり、再エネ発電事業者への買取保証は継続されます。「再エネ支援をやめた」のではなく「誰が払うかを変えた」のです。廃止によって平均的なドイツの家庭は年間約200ユーロの節約が見込まれるとされました。

Energiewende全体コストへの評価——連邦会計検査院の審判

2019年、ドイツ連邦会計検査院は直近5年間で1600億ユーロのコストがかかったと認定し、その支出は「得られた成果に対して極端に不釣り合いだ」と批判しました。かつて広く支持されたこのプログラムは、2019年時点では「高コストで、混乱しており、不公平」であり「大規模な失敗」と見なされていると記録されています。

日本の制度設計への示唆

ドイツのEEGが示すのは、再エネ固定買取費用を電力消費者に転嫁する方式には、普及が加速した局面で賦課金が急増するという構造的リスクがあるという点です。電力多消費産業への免除を広げれば一般家庭の負担が増し、縮めれば産業競争力に影響します。財源設計の問題は制度導入時よりも、再エネが大量に普及した段階で顕在化しやすいという教訓を、ドイツの経験は示しています。

出典

よくある質問

Q. EEG賦課金の仕組みを教えてください。

A. 送電系統運営者(TSO)が再エネ発電事業者にEEG規定の買取価格を支払い、その電力をEEX(エネルギー取引所)で市場価格にて売却します。この差額が賦課金として電力消費者全体に割り振られます。電力多消費産業と鉄道は大幅に免除され、最低でも1kWh当たり0.05セントの負担に抑えられていました。

Q. EEG賦課金はいつ廃止され、代替財源はどうなりましたか?

A. 2022年7月1日に廃止されました。代替財源として排出権取引収入と連邦予算が充てられ、再エネ事業者への買取保証は継続されています。廃止により平均的なドイツの家庭は年間約200ユーロの節約が見込まれるとされました。

Q. 2011年時点のドイツの電気料金はどのくらいでしたか?

A. 2011年の研究では平均小売電気料金が約35セント/kWhと記録されており、世界最高水準の一つでした。2017年のEEG賦課金単体が1kWh当たり6.88セントに達しており、消費者の電力コストに占める割合として相当大きなものでした。

Q. Energiewendeの費用は会計上どう評価されましたか?

A. 2019年にドイツ連邦会計検査院が直近5年間で1600億ユーロのコストを認定し、「得られた成果に対して極端に不釣り合いだ」と批判しました。同年時点でこの政策は「高コストで、混乱しており、不公平」であり「大規模な失敗」との評価を受けていました。

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