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補助金の仕訳と圧縮記帳|受け取った年度の税負担を抑える

執筆:小嶋 譲司株式会社TOE 代表取締役 読了 約9情報時点:2026年7月19日
補助金の仕訳と圧縮記帳|受け取った年度の税負担を抑える
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本文は2026年7月19日の情報です。その後に状況が変わった制度があります。申請の可否は下の表で判断してください。

結論

  • 補助金・助成金は原則として「収益」であり、受け取った事業年度の益金(課税対象)になります。設備投資に使った補助金だからといって自動的に非課税になるわけではありません。
  • 国や地方公共団体から固定資産の取得等のために交付された補助金には、法人税法42条の「圧縮記帳」を使うことで、受け取った年度に一括で課税されるのを防ぎ、税負担を将来に繰り延べることができます。
  • 圧縮記帳は税金を免除する制度ではなく、あくまで課税の繰延べです。適用するかどうかは任意で、赤字決算や繰越欠損金がある年度は、あえて圧縮記帳をしない方が有利なケースもあります。

補助金は原則として課税対象になる

まず押さえておくべきなのは、補助金は受け取った時点で「収益」として計上され、法人税・所得税の課税対象になるという原則です。これは、ものづくり補助金事業再構築補助金のような設備投資系の補助金でも、持続化補助金のような経費補助系の補助金でも変わりません。

補助金だから非課税、という制度は存在しません。「補助金で買った設備だから税金がかからない」という誤解をしている経営者は少なくありませんが、実務上はまず全額を収益計上することが出発点になります。そのうえで、一定の要件を満たす補助金については、法人税法上の特例である圧縮記帳を使って、課税のタイミングを調整できる、という順序で理解してください。

収益計上のタイミングにも注意が必要です。実務では、交付決定を受けた日ではなく、実績報告を提出したあとに「補助金の額の確定通知」を受けた日を含む事業年度に収益計上するのが一般的な取り扱いです。交付決定と入金、確定通知が年度をまたぐケースは珍しくないため、どの事業年度に計上すべきかは、必ず顧問税理士に確認してください。

圧縮記帳とは何か

圧縮記帳とは、法人税法42条(国庫補助金等をもって取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)に基づく制度で、国または地方公共団体から固定資産の取得等に充てるために交付された補助金について、その補助金相当額を「圧縮損」として損金算入できる仕組みです。

具体的には、補助金を使って機械装置や建物などの固定資産を取得した場合、その固定資産の帳簿価額を補助金相当額だけ引き下げ、引き下げた金額を損金(圧縮損)として計上します。この圧縮損が、補助金収入と相殺される形になるため、補助金を受け取った事業年度の税負担が実質的に発生しない、あるいは大幅に軽くなります。

ここで重要なのは、圧縮記帳は「税金がなくなる」制度ではないという点です。固定資産の帳簿価額を引き下げた分だけ、その後の減価償却費が少なくなります。減価償却費が少なくなれば、その分だけ将来の事業年度の利益が増え、結果として将来の税負担が増えます。つまり圧縮記帳は、補助金を受け取った年度に発生する税負担を、固定資産の耐用年数にわたって将来に繰り延べる制度です。総額としての税金が減るわけではなく、支払うタイミングをずらすことで、設備投資直後の資金繰りを楽にすることが目的です。

圧縮記帳を使う場面・使わない場面

圧縮記帳が効果を発揮するのは、補助金を受け取った年度にまとまった収益が発生し、そのままでは法人税等の納税額が大きく膨らんでしまうケースです。特に、設備投資額が大きく、自己資金の持ち出しも発生している状況では、補助金相当額にまで課税されてしまうと、手元資金がさらに圧迫されます。圧縮記帳を使えば、その年度の納税額を抑え、資金繰りの余力を確保できます。

一方で、次のような場合は圧縮記帳を使わない選択肢も検討する価値があります。

  • 繰越欠損金が十分にある事業年度に補助金を受け取った場合。この場合、圧縮記帳をしなくても繰越欠損金と補助金収入が相殺されるため、あえて圧縮記帳をせず、将来の減価償却費を多く残しておいた方が、将来年度の税負担軽減効果が高くなることがあります。
  • 今後、固定資産を早期に売却・除却する予定がある場合。圧縮記帳をすると帳簿価額が下がっているため、売却時の譲渡益が大きく計算され、その年度に課税が集中することがあります。
  • 補助金額が小さく、圧縮記帳の事務負担(申告書別表の作成など)に見合わない場合。

どちらが有利かは、当期の課税所得の状況、繰越欠損金の有無、今後の設備の使用計画によって変わります。判断は顧問税理士と相談のうえで行ってください。

圧縮記帳の会計処理方法(2つの方式)

圧縮記帳の会計処理には、大きく分けて「直接減額方式」と「積立金方式」の2つがあります。

直接減額方式

固定資産の取得価額そのものから、補助金相当額を直接減額する方法です。会計上の帳簿価額と税務上の帳簿価額が一致するため、処理としてはシンプルです。多くの中小企業がこちらを採用しています。

積立金方式

会計上は固定資産を取得価額のまま資産計上し、決算の剰余金処分で「圧縮積立金」を積み立てることで、税務上だけ圧縮記帳と同じ効果を得る方法です。会計上の帳簿価額と税務上の帳簿価額がずれるため、申告書の別表五(一)で利益積立金の調整が必要になり、直接減額方式より事務負担が重くなります。決算書上の資産・純資産を大きく見せたい場合(金融機関への提出資料など)に選ばれることがあります。

比較項目直接減額方式積立金方式
会計上の帳簿価額補助金相当額を控除した金額取得価額のまま(圧縮しない)
決算書の総資産圧縮後の低い金額で表示圧縮前の高い金額で表示
純資産への影響圧縮損計上で当期純利益が下がる剰余金処分のため当期純利益に影響なし
申告書の事務負担比較的軽い別表五(一)の調整が必要で重い
金融機関からの見え方総資産・自己資本が小さく見える総資産・自己資本を維持できる

金融機関からの融資を控えている、自己資本比率を重視した決算書を維持したいという事情がある場合は、積立金方式も選択肢に入りますが、事務負担とのバランスで判断してください。

具体的な仕訳例

ものづくり補助金で1,000万円を受け取り、1,500万円の機械装置を購入したケースで、直接減額方式の仕訳を示します。

1. 補助金の入金時

借方金額貸方金額
現金預金1,000万円国庫補助金収入1,000万円

2. 機械装置の取得時

借方金額貸方金額
機械装置1,500万円現金預金1,500万円

3. 圧縮記帳の処理(決算時)

借方金額貸方金額
固定資産圧縮損1,000万円機械装置1,000万円

この結果、機械装置の帳簿価額は500万円(1,500万円-1,000万円)となり、以後の減価償却費はこの500万円を基礎に計算します。国庫補助金収入1,000万円と固定資産圧縮損1,000万円が損益計算書上で相殺されるため、この年度の課税所得への影響はゼロになります。

積立金方式の場合は、3.の仕訳の代わりに、決算の剰余金処分で次の処理を行い、申告書上で減算調整をします。

借方金額貸方金額
繰越利益剰余金1,000万円圧縮積立金1,000万円

会計上の機械装置の帳簿価額は1,500万円のまま据え置かれ、減価償却費も1,500万円ベースで計上されますが、税務上は申告調整により圧縮積立金を毎期取り崩して益金に加算していく処理が必要です。実務では、直接減額方式に比べて税理士側の管理コストが上がる点に留意してください。

圧縮記帳の対象となる補助金・ならない補助金

法人税法42条の圧縮記帳が使えるのは、国または地方公共団体から交付され、かつ固定資産の取得等に充てることを目的とした補助金です。設備投資を主目的とする補助金は対象になりやすく、次のようなものが典型例です。

一方で、持続化補助金のように、広報費・展示会出展費・ウェブサイト関連費など、固定資産に該当しない経費が中心の場合は、そもそも圧縮記帳の対象となる資産を取得していないケースが多くなります。持続化補助金であっても、機械装置等の固定資産を取得した部分があれば、その部分に限って圧縮記帳の対象になり得ますが、対象になるかどうかは経費の内容ごとに個別判断が必要です。

対象になるかどうかの最終判断は、補助金の交付要綱・交付規程の内容と、実際に取得した資産の性質によって決まります。必ず税理士に補助金の交付決定通知書・交付規程を見せたうえで確認してください。

消費税の取り扱い

補助金の受け取り自体は、消費税の課税対象にはなりません。消費税は「資産の譲渡等の対価」に課税される仕組みですが、補助金の交付は対価性のない金銭の給付にあたるため、不課税取引として扱われます。したがって、補助金収入について消費税の課税売上高に含める必要はありません。

一方で、補助金を使って購入した設備や外注費については、通常どおり消費税の課税仕入れとして扱われ、仕入税額控除の対象になります。補助金で費用の一部が補填されているからといって、仕入税額控除の対象から除外されるわけではない点は、経理担当者が誤解しやすいポイントです。ただし、消費税の課税事業者が補助金相当額を含めて仕入税額控除を受けた場合、補助金交付元の制度によっては、消費税額相当分の返還を求められることがあります。この点は補助金ごとの交付要綱・実績報告の手引きで必ず確認してください。

実務での手続きの流れ

圧縮記帳を適用する場合、確定申告書に「国庫補助金等の圧縮額の損金算入に関する明細書」(別表十三など、様式は補助金の種類によって異なります)を添付する必要があります。この明細書を添付しないと、圧縮記帳の適用が認められないため、決算・申告作業の中で漏れやすい手続きです。

実務上の流れは、おおむね次のようになります。

  1. 補助金の交付決定を受ける
  2. 補助金の対象となる固定資産を取得する
  3. 実績報告を提出し、補助金の額の確定通知を受ける
  4. 確定通知を受けた事業年度の決算で、圧縮記帳を適用するかどうかを税理士と相談して決定する
  5. 圧縮記帳を適用する場合、直接減額方式か積立金方式かを選択し、仕訳・申告書別表の作成を行う
  6. 確定申告書に必要な明細書を添付して申告する

補助金の交付決定通知書・実績報告書・確定通知書は、圧縮記帳の適用根拠になる書類です。決算・申告時にすぐ提示できるよう、経理担当者と補助金申請担当者の間で書類を共有しておくことをおすすめします。

まとめ

補助金は原則として受け取った事業年度の収益であり、課税対象になります。設備投資のために国や地方公共団体から交付された補助金については、法人税法42条の圧縮記帳を使うことで、受け取った年度の税負担を軽くし、将来の減価償却費として繰り延べることができます。

ただし、圧縮記帳は税金そのものを減らす制度ではなく、課税のタイミングを将来にずらす制度です。繰越欠損金の状況や今後の資産売却計画によっては、あえて圧縮記帳を使わない方が有利なこともあります。直接減額方式と積立金方式のどちらを選ぶか、対象となる補助金・経費の範囲はどこまでかは、個別の状況によって判断が分かれる部分が多いため、必ず顧問税理士と相談しながら決定してください。この記事は一般的な会計処理の考え方を整理したものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。

よくある質問

Q. 圧縮記帳をすると税金は最終的にいくら安くなりますか?

A. 圧縮記帳は税額を免除する制度ではなく、課税のタイミングを将来に繰り延べる制度です。固定資産の帳簿価額が下がる分、将来の減価償却費が減り、その分だけ将来年度の税負担が増えます。生涯の税負担の総額が減るわけではない点に注意してください。

Q. 圧縮記帳は必ず適用しなければいけませんか?

A. 任意です。繰越欠損金がある年度や、今後早期に資産を売却する予定がある場合は、あえて圧縮記帳をしない方が有利なこともあります。適用する場合は確定申告書に所定の明細書の添付が必要です。

Q. 圧縮記帳の対象になる補助金とならない補助金の違いは何ですか?

A. 国または地方公共団体から交付され、固定資産の取得等を目的とした補助金が対象です。ものづくり補助金や事業再構築補助金の設備投資部分は対象になりやすい一方、経費補助が中心の補助金は対象資産がないこともあります。

Q. 補助金は消費税の課税対象になりますか?

A. 補助金の交付自体は対価性がないため消費税は不課税です。課税売上高に含める必要はありませんが、補助金で購入した設備等の仕入税額控除の扱いは制度ごとに確認が必要です。

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