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中堅・中小・スタートアップの賃上げに向けた省力化等の大規模成長はAI・システム導入に使えるか|対象経費と締切【2026年8月時点】

執筆:小嶋 譲司株式会社TOE 代表取締役 読了 約10情報時点:2026年9月1日
中堅・中小・スタートアップの賃上げに向けた省力化等の大規模成長はAI・システム導入に使えるか|対象経費と締切【2026年8月時点】
この記事が扱う制度の公募状況

結論

  • AI・ITシステム導入は補助対象。 公式サイトに「ソフトウェアの購入や情報システムの構築」が補助対象の取組として明記されている(2026年8月27日時点)。
  • 補助上限50億円、補助率1/3以下。 一般企業の申請には投資額20億円以上(税抜、外注費・専門家経費を除く補助対象経費分)の要件がある。この規模に満たない場合は応募できない。
  • 6次公募締切は2026年8月31日(月)17:00。 申請はjGrants経由の電子申請のみ。GビズIDプライムアカウントが必須。

補助対象となる取組とAI・システムの位置づけ

公式サイトには、補助対象となる取組として以下の3つが明示されている。

  1. 工場・倉庫・販売拠点などの新設や増築
  2. 最先端の機械や省力化できる設備の購入
  3. ソフトウェアの購入や情報システムの構築

AIシステムや業務システムの導入は3番目に該当する。省力化を主目的とするシステムであれば2番目とも重なりうる。

対象として明記されているのは「取組の種類」であり、具体的にどの費用項目(ライセンス費・構築費・カスタマイズ費・保守費など)が補助対象経費として認められるかは公募要領で確認してほしい。また、外注費・専門家経費は投資額の計算から除かれる点にも注意が必要だ。

「AI・IT導入」と一口に言っても何が対象になるか

実際に補助対象として検討できるシステムの類型を整理しておく。以下はあくまで取組の種類に基づいた例示であり、個々の費用が補助対象経費として認定されるかどうかは公募要領で必ず確認すること。

システムの例取組の分類省力化との整合
生産管理・MESシステムソフトウェア購入・情報システム構築高(製造現場の自動化・効率化)
AI画像検査システムソフトウェア購入・省力化設備高(目視検査工程の代替)
ERP・基幹システム刷新ソフトウェア購入・情報システム構築中〜高(管理業務の一元化)
自動倉庫・WMSシステム省力化設備・情報システム構築高(在庫管理・ピッキングの省人化)
AIチャットボット・問い合わせ自動化ソフトウェア購入・情報システム構築中(間接部門の業務削減)

この制度は「省力化等の大規模成長投資」を目的としているため、AIやITの導入が「省力化」「業務効率化」という文脈で事業計画に位置づけられるほど、制度目的との整合が取りやすくなる。「デジタル化のため」という抽象的な記載ではなく、「この工程で何人分の作業を削減できるか」「投資後3年間でどう賃上げに結びつくか」を数値で示せる計画が求められる。

なお、外注費・専門家経費は投資額の計算から除かれる。システム構築を外部ベンダーに委託する費用が大部分を占める場合、「投資額20億円以上」の要件を満たさなくなる可能性がある。自社調達・内製化の比率と外注費の切り分けについては事前に精査しておくことが不可欠だ。

制度の概要

項目内容
予算額2,000億円
補助上限額50億円
補助率1/3以下
補助対象者中堅・中小・スタートアップ企業(常時使用する従業員数2,000人以下・単体ベース)
みなし大企業対象外
補助事業期間交付決定日から最長で令和10年(2028年)12月末まで
申請方法jGrants電子申請のみ
6次公募期間2026年7月31日〜2026年8月31日(月)17:00

コンソーシアム形式(最大10社)での共同申請も可能だが、一定の要件を満たす必要がある。詳細は公募要領で確認してほしい。

みなし大企業に注意

補助対象外となる「みなし大企業」の典型例は、大企業が議決権の多数を持つ子会社や関連会社だ。従業員数が2,000人以下であっても、親会社や出資構造によってはみなし大企業に該当する。グループ内で資本関係がある場合は申請前に必ず確認してほしい。判断に迷う場合は事務局への事前確認を推奨する(ただし問い合わせ受付は締切3営業日前17:00まで)。

スタートアップの定義

設立20年以内の企業で、公募開始日時点でVC等やCVCが株主構成に加わっている者が対象。既に上場しているスタートアップの場合は、上場前にVC等またはCVCが株主に加わっていた者が対象となる。この定義に当てはまらない企業は、一般企業として申請する。

申請の要件

一般企業向け

  • 投資額:20億円以上(税抜。外注費・専門家経費を除く補助対象経費分)
  • 賃上げ要件: 補助事業の終了後3年間、対象事業に関わる従業員1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が5.0%以上

100億宣言企業向け

  • 投資額:15億円以上(税抜。外注費・専門家経費を除く補助対象経費分)
  • 賃上げ要件: 同3年間で4.5%以上の年平均上昇率

100億宣言とは「売上高100億円」という目標を掲げ、実現に向けた取組を宣言するもの。6次公募で100億宣言企業向けの類型を使う場合、2026年8月17日(月)までに宣言の申請を完了させる必要があった(公式サイトの掲載内容より)。この期限はすでに過ぎているため、これから100億宣言を申請しても6次公募への適用は難しい。

賃上げ目標を達成できなかった場合、未達成率に応じて補助金の返還を求められる。天災など事業者の責めに帰さない理由は除く。事業者名は公表されない。ただし、賃上げ義務は補助事業終了後3年間続くため、補助金を受け取ったあとも継続して管理が必要になる。申請段階で「本当に3年間この水準を維持できるか」を事業計画に落とし込んでおくことが重要だ。

賃上げ要件で迷いやすいポイント

「対象事業に関わる従業員」の範囲が論点になりやすい。全社員が対象とは限らず、補助事業の実施部門・関連部門の従業員が対象になる場合がある。範囲の定義次第で分母(人数)が変わり、達成難易度が大きく変わる。申請様式に記載する「対象従業員の範囲」を曖昧にしたまま提出すると、後の賃上げ確認で齟齬が生じる可能性がある。公募要領の定義を確認し、現時点での頭数と賃金水準を試算した上で申請に臨んでほしい。

申請の手順

  1. 公募要領を入手・熟読する。 公式サイト(https://chukentou-seichotoushi-hojo.jp)の「資料ダウンロード」ページから取得する。
  2. GビズIDプライムアカウントを確認する。 申請に必須。取得済みでない場合は今すぐ手続きを始める。取得に時間を要する場合があるため、余裕を見て動く必要がある。
  3. 申請様式に記入し、公募要領のチェックリストで全項目を点検する。 提出後に差し戻しが来てから修正していては締切に間に合わない。提出前の一括点検が最も確実な対策。
  4. jGrantsから電子申請する。 グループ会社を含む他アカウントでの代理申請は認められない。自社のGビズIDでの申請が必須。

問い合わせの受付は「公募締め切りの3営業日前の17:00まで」とされている。2026年8月31日が締切であれば、3営業日前は2026年8月27日(水)17:00にあたる。今日17時以降に生じた疑問点は、締切までに回答が届かない可能性があるため、申請の判断は手元の公募要領を根拠に進めることになる。

申請前チェックリスト

公募要領が定めるチェックリストとは別に、実務上確認しておくべき項目を示す。

#確認項目詰まりやすいポイント
1GビズIDプライムで申請できる状態かメンバーアカウントでは申請不可。本人確認書類の提出と審査に時間がかかる
2投資額が20億円以上か(外注費・専門家経費を除く)外注費を含めて計算すると実際の投資額を過大評価している可能性がある
3みなし大企業に該当しないか親会社・大株主との資本関係を確認する
4賃上げ5.0%を3年間続けられるか試算したか試算なしに提出すると採択後に返還リスクが発生しうる
5対象従業員の範囲を明示したか「全社員」か「補助事業関係者」かで分母が変わる
6事業計画の数値に根拠があるか省力化・売上増の見込みは根拠データをセットで示す
7公募要領のチェックリスト全項目を確認したか書類の不備による差し戻しは提出前に防げる
8jGrantsの動作を事前に確認したか締切直前はアクセスが集中する可能性がある

ここで落ちる:よくある失敗パターン

書類審査で落ちる(差し戻し・却下)

  • GビズIDがメンバー:プライムアカウントは取得手続き後、書類郵送のやり取りが発生する場合がある。締切間際に気づいても間に合わないことがある。
  • 投資額の計算ミス:外注費・専門家経費を含めた金額で「20億円以上」と計上していたが、それらを除くと20億円を下回っていた。
  • 代理申請:グループ会社を含む他アカウントでの代理申請は認められない。自社のGビズIDでの申請が必須。

内容審査で弱くなる

  • 省力化の定量化ができていない:「業務効率が上がります」という記述だけでは訴求力がない。「○工程に係る人員を○人から○人に削減する」という水準で示すことが求められる。
  • 賃上げと投資の因果関係が曖昧:「この投資で収益が上がり、賃上げに回せる」というロジックが事業計画の中で示せていない。
  • 補助事業期間中の実行可能性が低い:交付決定から2028年12月末までの期間内に、投資・稼働・賃上げが完了する計画になっているかのスケジュール根拠がない。

今週中に動けるか

この記事を書いている2026年8月27日時点で、公募締切まで実質4日。

GビズIDを取得済みで、投資額・事業計画の骨格がすでに固まっており、申請様式への記入を進められる状態にあれば、締切に間に合う可能性はある。公式サイトにも「期限間近はアクセスが集中することが想定される」との注意書きがある。余裕を持って申請してほしい。

GビズIDを持っていない、または投資計画がまだ整っていない場合、6次公募への申請は現実的でない。次の公募開始時期は2026年8月27日時点で未公表のため、次回を見込んで動くことは現時点ではできない。

なお、令和8年熊本地震で被災した事業者は、期限内の申請が難しい場合、個別に事務局へ相談できる(2026年8月13日付の公式サイトのお知らせより)。

採択後に続くこと

補助金の実務家として伝えておきたいのは、採択後の話だ。

筆者は事業再構築補助金(第6回)で採択を受けた後、実績報告の差し戻しが繰り返され、最終的な精算払が完了するまでに約10か月かかった(対応期間:2023年10月〜2024年8月)。差し戻しの多くは内容の優劣ではなく、公募要領が求めるフォーマットどおりに書類が揃っているかという機械的な照合で起きた。

本補助金の補助事業期間は令和10年(2028年)12月末まで続く。その間、実績報告・賃上げ状況の確認が義務として続く。投資額20億円以上の大規模投資であれば、報告書に求められる記録の量と精度も相応に高くなる。申請時の事業計画の書き方が後の報告に直接影響するため、提出前の記載内容は「報告フェーズでどう説明するか」を見越して設計してほしい。

当社ではIT導入補助金のITツール登録の際に書類の不備で6回差し戻しを受けた経験から、「指摘が来てから直す」のをやめ、提出前に公募要領のチェックリストで全項目を一括点検する手順に切り替えた。申請規模が大きくなるほど、この事前点検を飛ばすリスクは増す。

採択後に管理が続く義務の全体像

フェーズ主な対応実務上の注意
交付決定後・事業開始前交付規程・事業計画の内容を社内で共有担当者が変わっても引き継げる状態を作っておく
事業実施中経費の支出記録・証跡の保管領収書・見積書・請求書・納品書をフォルダ管理
実績報告時事業計画と実績の対比表の作成乖離がある場合は理由を説明できる状態にしておく
賃上げ確認(3年間)従業員の給与データを年度ごとに集計「対象従業員」の範囲を申請時と一致させた台帳を維持する

また、補助金を「取れること」と「やるべきこと」は別の判断軸だ。筆者はものづくり補助金 第11次で採択後に事業計画を見直し、2023年7月に辞退届を提出した経験がある。20億円超の投資を前提とする本補助金では、採択後に「やっぱりやらない」となった場合の影響は小さくない。採択を目指す前に、その投資が自社の実行計画として本当に成立するかを確認してほしい。

出典

よくある質問

Q. 外注費・専門家経費は補助対象経費に含まれないのか?

A. 外注費・専門家経費は「投資額(補助対象経費)」の計算から除かれます。外注費込みで計算していると「20億円以上」の要件を満たすと思っていても、それらを除くと要件未達になる場合があります。個々の費用が補助対象経費として認定されるかどうかは公募要領の定義で確認してください。

Q. GビズIDのプライムとメンバーの違いは?申請に影響するか?

A. プライムは法人代表者または委任を受けた担当者が取得する本人確認済みアカウントで、補助金申請に使えます。メンバーはプライムの配下アカウントであり、本補助金への申請には使えません。プライム取得には書類郵送を伴う審査があるため、締切間際に気づくと間に合わない場合があります。申請を検討した段階でGビズIDの種別を確認してください。

Q. 賃上げ要件の「対象事業に関わる従業員」とは全社員のことか?

A. 必ずしも全社員を指すとは限りません。補助事業の実施部門・関連部門の従業員が対象になる場合があり、範囲の定義次第で分母(人数)が変わります。申請様式に記載する「対象従業員の範囲」を曖昧にしたまま提出すると、採択後の賃上げ確認で齟齬が生じる可能性があります。公募要領の定義を確認し、範囲を明示した上で申請してください。

Q. 賃上げ目標を達成できなかった場合、補助金は全額返還になるのか?

A. 全額返還とは限らず、未達成の程度(未達成率)に応じた返還が求められます。ただし返還が発生することに変わりはないため、申請前に3年間の賃金シミュレーションを行い、実現可能な水準で計画を立てることが重要です。天災など事業者の責めに帰さない事由は除かれます。事業者名は公表されません。

この制度は、AI・システムの導入にも使えます対象になる経費とならない経費、落ちる計画の共通点を整理しました。

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