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ものづくり補助金でAI導入は補助対象になるか|経費区分の考え方

執筆:小嶋 譲司株式会社TOE 代表取締役 読了 約10情報時点:2026年8月13日
ものづくり補助金でAI導入は補助対象になるか|経費区分の考え方
この記事が扱う制度の公募状況

結論

  • AI導入費用は、自社専用のソフトウェア・情報システムとして「購入・構築」する場合、経費区分「機械装置・システム構築費」(必須区分)に計上できます。月額課金のSaaS型AIサービスとして利用する場合は「クラウドサービス利用費」に区分されると考えられます。
  • ただし、単にAIツールを導入するだけでは対象外です。公募要領は「単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象事業に該当しません」と明記しており、AI導入が新製品・新サービス開発と一体である必要があります。
  • 第23次公募(2026年2月6日〜5月8日)は締切済みです。2026年7月18日時点で第24次の公募日程は公式サイトで未公表のため、申請を検討する場合は最新情報を公式サイトで確認してください。

AI導入費用はどの経費区分に入るのか

ものづくり補助金(正式名称:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、第23次公募要領上の名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」)の公募要領は、補助対象経費を「機械装置・システム構築費」「技術導入費」「専門家経費」「運搬費」「クラウドサービス利用費」「原材料費」「外注費」「知的財産権等関連経費」の8区分に分けています。このうち「機械装置・システム構築費」だけが両枠(製品・サービス高付加価値化枠/グローバル枠)共通で必須の区分です。

AI導入費用がどこに入るかは、導入形態で変わります。

  • 自社専用のシステムとしてAIを開発・導入する(買い切り・カスタム構築)→「機械装置・システム構築費」
  • 月額・従量課金のクラウド型AIサービスを利用する→「クラウドサービス利用費」
  • 外部の知的財産権(AIモデルのライセンス等)を導入する→「技術導入費」

このどれに該当するかで、後述する上限額の扱いが変わるため、見積書を取る段階でどの区分に整理するかを決めておく必要があります。

「機械装置・システム構築費」の定義を公募要領原文で確認する

公募要領は「機械装置・システム構築費」を次の3項目で定義しています。

  1. 専ら本事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費
  2. 専ら本事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
  3. 1若しくは2と一体で行う、改良・修繕又は据付けに要する経費

AI導入費用が該当しうるのは2番目です。「専ら本事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム」という文言のとおり、汎用的に社内で使い回すツールではなく、当該補助事業の遂行のために構築・導入するAIシステムであることが条件になります。

なお、本事業では単価50万円(税抜き)以上の機械装置等を取得することが設備投資として必須とされており、公募要領はこの「機械装置等」の定義を上記の①〜③と同じ箇所に置いています。つまり、単価50万円(税抜き)以上のAIシステムを自社専用として構築する場合は、この必須の設備投資要件に充当できる経費区分に該当すると読み取れます。ただし該当可否は個別の見積書・仕様書の内容で審査されるため、断定はできません。申請前に必ず公募要領原文と事務局への確認で裏を取ってください。

AI導入が補助対象になる条件(新製品・新サービス開発要件)

ここが実務上いちばん見落とされやすい点です。公募要領は製品・サービス高付加価値化枠について次のように定めています。

製品・サービス高付加価値化枠は、革新的な新製品・新サービス開発の取組が補助対象であり、既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業は補助対象外です。

そのうえで、補助対象外となる事業の一つとして「本補助事業では、単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象事業に該当しません」と明記されています。

つまり、「業務効率化のためにAIを入れる」という説明だけでは通りません。AI導入によって顧客に新たな価値を提供する新製品・新サービスが生まれる、という設計にする必要があります。また、公募要領は「業種ごとに同業の中小企業者等において既に相当程度普及している新製品・新サービスの開発は該当しません」とも定めており、同業他社ですでに広く使われているAIサービスの単純導入は、この点でも不利になります。

もう一つ注意すべきは、補助対象外事業の規定にある「本事業の主たる課題の解決そのものを他者へ外注又は委託する事業、及び本事業の主たる部分を他者に外注又は委託し、企画だけを行う事業」です。AIシステムの構築を外部ベンダーに丸ごと発注し、自社は企画だけという体制だと、この規定に抵触するおそれがあります。AI導入を主導するのは自社であり、外注はその一部という位置づけを事業計画上明確にしておく必要があります。

経費区分と上限額(申請枠別)

申請枠補助上限額(補助下限額100万円)補助率対象経費区分
A) 製品・サービス高付加価値化枠1〜5人:750万円/6〜20人:1,000万円/21〜50人:1,500万円/51人以上:2,500万円(賃上げ特例で規模に応じ最大+100万〜1,000万円上乗せ)中小企業1/2、小規模企業・小規模事業者及び再生事業者2/3機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
B) グローバル枠3,000万円(賃上げ特例で最大+1,000万円)中小企業1/2、小規模企業・小規模事業者2/3左記に加え(海外市場開拓(輸出)に関する事業のみ)海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費

補助上限額の合計750万円〜4,000万円という幅は、A枠の最小構成(750万円)とグローバル枠に賃上げ特例を組み合わせた最大構成(3,000万円+1,000万円=4,000万円)の間で決まります。

500万円上限に注意する

公募要領には次の記載があります。

「機械装置・システム構築費(海外子会社への外注費における機械装置・システム構築費にあたる経費を含む)」以外の経費は、総額で500万円(税抜き)までを補助上限額とします(グローバル枠の場合は、1,000万円(税抜き)まで)。

AI導入費用を「クラウドサービス利用費」や「技術導入費」に区分した場合、この500万円(グローバル枠1,000万円)の上限に含まれます。一方、自社専用システムとして「機械装置・システム構築費」に区分できれば、この上限の対象外です。同じAI導入でも、どの区分で申請するかによって使える金額の枠が変わるため、見積書の内訳を作る段階で区分を意識しておく必要があります。

また、補助対象経費(税抜)は事業に要する経費(税込)の3分の2以上であることが必要とされており、AI導入費用だけを積み上げて申請することはできません。事業全体の経費構成の中で設計する必要があります。

見積書・仕様書の整合性審査は機械的に見られる

公募要領は「システム構築費については、補助金交付候補者として採択後、見積書に加え仕様書等の価格妥当性を検証できる書類の提出を求めることがあります」としています。AIシステムのようにブラックボックス化しやすい経費区分ほど、この価格妥当性の検証が厳しく入る可能性があります。

筆者(小嶋)は、支援先のIT導入補助金のITツール登録を進めた際、書類の不備で6回差し戻された経験があります。指摘を受けてから直すという進め方を続けていた結果、差し戻しの往復だけで時間を消費しました。以降は「指摘が来てから直す」のをやめ、提出前に公募要領のチェックリストで全項目を一括点検する手順に切り替えています。差し戻しの多くは内容の優劣ではなく、必須項目が公募要領のフォーマットどおりに揃っているかという機械的な照合で発生します。AIシステムの見積書・仕様書についても、金額の根拠だけでなく、公募要領が求める書類の形式が揃っているかを提出前に一つずつ照合することが、差し戻しを減らす実務上の対策になります。

採択されたあとも続く手続き

ものづくり補助金は、採択されて終わりではありません。交付決定後は補助事業を実施し、実績報告を行い、さらに事業計画期間中(3〜5年)は毎年、賃金の増加要件・事業所内最低賃金水準要件などの達成状況を報告する義務があります。基本要件②(賃金の増加要件)が事業計画期間最終年度に未達の場合、補助金交付額に未達成率を乗じた額の返還を求められる規定です。

筆者は事業再構築補助金第6回に採択されたのち、実績報告で差し戻しが繰り返され、対応に2023年10月から2024年8月までかかった経験があります。最終的に2024年9月に精算払まで完了しましたが、それ以後も事業化状況報告を毎年提出し続けています。AI導入のようにシステム内容の説明が複雑になりやすい案件では、採択後の実績報告・効果測定の負荷も見込んで計画を立てることをおすすめします。

また、筆者はものづくり補助金第11次に採択されましたが(2022年10月)、事業計画を見直した結果、2023年7月に辞退届を提出しています。採択されることと、その計画を最後まで遂行することは別の話です。AI導入計画についても、採択のための書き方を優先するのではなく、実際に自社で実行できる計画かどうかを先に固めておくことが重要です。

採択率から見る現実的な見通し

AI導入案件に限定した採択率は公表されていません。参考として、公募全体の採択率の推移は次のとおりです(2026年7月19日取得の公表値に基づく)。

公募回締切申請件数採択件数採択率
第15次2023年9月29日5,694件2,861件50.2%
第16次2024年1月19日5,608件2,738件48.8%
第17次2024年5月20日629件185件29.4%
第18次2024年6月25日5,777件2,070件35.8%
第19次2025年7月28日5,336件1,698件31.8%
第20次2025年10月27日2,453件825件33.6%
第21次2026年1月23日1,872件638件34.1%
第22次2026年4月30日1,552件582件37.5%

全22回の平均採択率は47.5%ですが、直近5回(第18次〜第22次)の平均は34.6%まで下がっています。筆者自身、ものづくり補助金には第9次・第10次・第18次・第19次にも応募しており、通らなかった回もあります。採択率の水準だけを見て楽観的に計画を立てるのではなく、新製品・新サービス開発要件を満たす事業計画かどうかを厳密に詰めることが、直近の採択率の中では重要度を増しています。

次回公募のスケジュール(2026年8月13日時点)

第23次公募は2026年2月6日に公開され、2026年4月3日17:00に電子申請受付が開始、2026年5月8日17:00(厳守)に締め切られています。公式サイトを2026年7月18日に確認した時点で、第24次公募の日程は未公表でした。本記事執筆時点(2026年8月13日)でこれ以降の公式な更新は反映していないため、申請を検討する場合は必ず公式サイト(https://portal.monodukuri-hojo.jp/ )で最新の公募日程を確認してください。

G ビズ ID プライムアカウントの発行には一定期間を要するため、次回公募が始まってから準備を始めると申請期間内に間に合わない可能性があります。AI導入を検討している場合、経費区分の整理や見積取得と並行して、G ビズ ID プライムアカウントの準備だけは先に進めておくことをおすすめします。

まとめ

AI導入費用は、自社専用システムとして構築するなら「機械装置・システム構築費」、クラウド型サービスとして利用するなら「クラウドサービス利用費」に区分されるのが基本です。ただし、単なるツール導入では補助対象外となる規定がある以上、AI導入と新製品・新サービス開発をどう一体化させるかが、経費区分以前の前提条件になります。見積書・仕様書の整合性は機械的に照合されるため、提出前のチェックリスト確認を徹底することが差し戻しを避ける実務上の対策です。

出典

よくある質問

Q. ものづくり補助金でChatGPTなど汎用AIツールの利用料は対象になりますか?

A. 汎用的なAIツールをそのまま導入するだけでは、公募要領が定める「単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないもの」に該当し、補助対象外となる可能性が高いです。自社専用のシステムとしてAIを組み込み、新製品・新サービス開発と一体化させる必要があります。

Q. AI導入費用はどの経費区分に計上しますか?

A. 自社専用のソフトウェア・情報システムとしてAIを購入・構築する場合は「機械装置・システム構築費」に該当します。月額課金のクラウド型AIサービスを利用する場合は「クラウドサービス利用費」に区分されると考えられますが、実際の区分は見積書・仕様書の内容で個別に判断されるため、事前に事務局や認定支援機関に確認してください。

Q. AI導入案件に限定したものづくり補助金の採択率はどのくらいですか?

A. AI導入案件に限定した採択率は公表されていません。公募全体の採択率は、2026年7月19日取得の公表値で全22回平均47.5%、直近5回(第18次〜第22次)平均34.6%です。

Q. 次回(第24次)ものづくり補助金の公募はいつ始まりますか?

A. 2026年7月18日時点で公式サイトを確認したところ、第24次公募の日程は未公表でした。第23次は2026年4月3日に電子申請受付開始、5月8日17時の締切をもって終了しています。最新の公募日程は必ず公式サイトで確認してください。

この記事で取り上げている制度

上限額・補助率・締切・公式の公募要領へのリンクは、それぞれの制度ページにまとめています。

この制度は、AI・システムの導入にも使えます対象になる経費とならない経費、落ちる計画の共通点を整理しました。

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