持続化補助金でAIツールの導入費は使えるか|対象経費の線引き
結論
- 持続化補助金でAIツールの導入費は申請できるが、区分と要件の判断が必要。「特定業務用ソフトウェア」として購入するなら機械装置等費、AIを活用したシステムを開発・構築するならウェブサイト関連費か委託・外注費で申請する。
- ChatGPTなど汎用AIサービスのサブスク費用は対象外になる可能性が高い。公募要領は「汎用性が高く目的外使用になりえるもの」を機械装置等費の対象外と明示している。
- 採択だけでは補助対象にならない。経費支出は交付決定日以降に限られ、補助事業期間内に実際にAIツールを使って販路開拓等の取組を行ったことを実績報告で証明しなければならない。
制度の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 小規模事業者持続化補助金<一般型> |
| 実施機関 | 中小企業庁(日本商工会議所・全国商工会連合会) |
| 補助上限 | 通常枠:50万円、賃金引上げ枠・卒業枠・後継者支援枠・創業枠:200万円 ※インボイス特例対象者はさらに50万円上乗せ |
| 補助率 | 2/3(賃金引上げ枠のうち赤字事業者は3/4) |
| 次回公募 | 第20回:2026年11月5日受付開始、2026年12月15日締切(2026年9月11日時点。日程は変更の可能性あり) |
| 申請方法 | 電子申請のみ(GビズIDプライムまたはメンバーが必要) |
| 問い合わせ | 商工会議所地区:03-4330-3480(9:00~12:00、13:00~17:00、土日祝除く) |
AIツールの導入費が入りうる経費区分は3つ
公募要領が定める補助対象経費は次の10区分だ。
①機械装置等費、②広報費、③ウェブサイト関連費、④展示会等出展費、⑤旅費、⑥新商品開発費、⑦資料購入費、⑧借料、⑨設備処分費、⑩委託・外注費
このうちAIツールやAIシステムの導入に関係するのは次の3つ。
- ①機械装置等費:業務特化型のAIソフトウェアを購入する場合
- ③ウェブサイト関連費:AIを活用したシステムやアプリを開発・構築する場合
- ⑩委託・外注費:AIシステムの開発を外部に委託する場合
どれで申請するかは導入するAIツール・システムの性質によって決まる。同じ「AI関連の費用」でも、既製ソフトの購入か、Web上のシステム構築か、外部開発の委託かによって該当区分が異なる。複数の経費を組み合わせることも可能だが、区分ごとの要件を個別に満たす必要がある。
①機械装置等費|特定業務用ソフトウェアとして申請する場合
機械装置等費の補助対象は「補助事業の遂行に必要な機械装置等の購入に要する経費」と定義されており、公募要領の対象経費例として「特定業務用ソフトウェア」が明示されている。例示は「精度の高い図面提案のための設計用3次元CADソフト」「販促活動実施に役立てる顧客管理ソフト」だ。
AIソフトウェアがここに当てはまるには、販路開拓等の補助事業に直結する特定用途のソフトウェアである必要がある。
対象外と明記されているもの
公募要領は機械装置等費の対象外として次を列挙している。
- 「家庭および一般事務用ソフトウェア」
- 「テレビ・ラジオ・その他汎用性が高く目的外使用になりえるもの」
- 「既に導入しているソフトウェアの更新料」
- 「通常の事業活動のための費用、単なる取替え更新の機械装置等の購入」
汎用AIサービスの定額プランはこのいずれかに該当する可能性が高い。特定の業種・用途にしか使えない業務特化型のAIツールと、どの業種でも使える汎用AIサービスでは、公募要領上の扱いが変わる。最終的な判断は審査によるため、不明なケースは担当の商工会議所に事前確認することを勧める。
また、「ウェブサイト、システム開発等に関連するソフトウェアは、ウェブサイト関連費で計上してください」という注記もある。AIを使ったシステム開発に伴うソフトウェアは、機械装置等費ではなくウェブサイト関連費に計上するのが公募要領の指示だ。区分を間違えると実績報告時に対象外と判断されるリスクがある。
サブスクリプション型AIツールの按分
「契約期間が補助事業期間を越えるソフトウェア使用権を購入する場合は、按分等の方式により算出された補助事業期間分のみ補助対象となります」と明記されている。月額課金のAIツールを導入する場合、補助事業期間(交付決定日〜実施期限)の範囲内の利用料分だけが補助対象となる。期間外の月額分は補助対象から除外される。
単価50万円以上は処分制限財産
単価50万円(税抜き)以上の機械装置等の購入は「処分制限財産」に該当し、補助事業終了後も一定期間は目的外使用・譲渡・廃棄等が制限される。処分制限期間内に処分する場合は補助金事務局等への承認申請が必要で、残存簿価から算出した金額の返還を求められることがある。承認を得ずに処分した場合は交付規程違反により補助金交付取消・返還命令(加算金付き)の対象となる。
また、1件あたり100万円(税込)超の機械装置等の購入には2者以上の見積が必要だ。
③ウェブサイト関連費|AIシステムの開発・構築
ウェブサイト関連費の対象経費例に、公募要領は次を含めている。
「システム開発、構築に係る経費(インターネットを活用するシステム、スマートフォン用のアプリケーション、業務効率化のためのソフトウェアなど)」
AIを活用したWebシステムやアプリを新たに開発・構築する場合は、この区分での申請を検討できる。AIチャットボットの構築、受注・在庫管理システムへのAI機能追加、業務効率化のためのAIを組み込んだアプリ開発などが想定される用途だ。
補助事業期間内に稼働していることが条件
公募要領は次のとおり明示している。「ホームページで受注システムを作成したものの、補助事業終了までにホームページにて公開して販路開拓等の取組を行っていない場合は、当該経費は補助対象外となります」。AIシステムの開発を発注し費用を支払っても、事業実施期限までに実際に稼働・使用しなければ補助対象外になる。開発に要する期間も含めて全工程が補助事業期間内に収まるかを、契約前に確認する必要がある。
対象外の例
- ウェブサイトに関連するコンサルティング・アドバイス費用は対象外
- 「補助事業期間内に公開に至らなかった動画・ホームページ・ランディングページ」は対象外
公募要領は証拠書類について「取引相手先によく確認し、補助金で求められる、仕様提示、見積、発注、納品、検収、請求、支払といった流れで調達を行い、適切な経理処理の証拠となる書類(取引画面の写し等)を整理・保存・提出ができることを把握してから取引をしてください」と求めている。AIシステムの開発を発注する前に、開発会社が補助金に必要な書類形式で請求・納品できるかを確認しておく必要がある。
⑩委託・外注費|AIシステム開発の外部委託
AIシステムの設計・開発を外部のベンダーや開発会社に委託する費用は委託・外注費に該当しうる。
発注総額が100万円超(税込)の場合は2者以上から見積りを取り、より安価な発注先を選ばなければならない。ただし発注内容の性質上、見積を取ることが困難な場合は、随意契約の対象とする理由書を実績報告時に提出する必要がある。なお、成功報酬型の費用や売上高・販売数量・契約数等に応じて課金される経費は補助対象外と明記されている。AIツール選定や申請書作成の支援に対する成功報酬も同様に対象外だ。
汎用AIツールが対象外になる理由
公募要領が機械装置等費の対象外として挙げる「汎用性が高く目的外使用になりえるもの」という基準が、AIツール判断の核心になる。
補助金の目的は「経営計画に基づく販路開拓等の取組」への支援だ。汎用AIサービスは、販路開拓にも使えるが、社内の一般業務にも、個人的な利用にも転用できる。その転用可能性が「目的外使用になりえる」という判断につながりやすい。一方、補助事業の特定の用途にしか使えない専用設計のAIシステムや、業種特化型で転用しにくいソフトウェアはこの基準を満たしやすい。「汎用か業種特化か」という軸が、補助対象か否かの分かれ目になる。
「通常の事業活動のための費用」も対象外と明記されている。日常業務の効率化だけを目的としたAI導入で、販路開拓等の取組に直結しないものは対象にならない。AIツールを申請する場合は、そのツールを使って何の販路開拓をするかを経営計画に具体的に書く必要がある。
申請前に確認する手続きの順序
交付決定通知書を受け取るまで経費は動かせない
公募要領に明記されている。「補助金の対象となる経費の発注・契約・支出行為は、『補助金交付決定通知書』に記載された交付決定日から可能です」「採択通知書だけでは、補助事業を始めることはできません」。
採択の連絡が来た後も、交付決定通知書が届くまで待つ必要がある。交付決定日前に行われた発注・契約・支出行為はすべて補助対象外だ。AIツールの月額プランを先に契約してしまうと、交付決定日以前の月額分が全額対象外になる。
経営計画と補助事業計画への記載が前提
「補助対象となる経費は、策定した『経営計画』に基づいて実施するもの」と定義されている。AIツール導入を補助対象にしたいなら、申請段階の経営計画と補助事業計画に、そのツールを使って何をするかを具体的に書く必要がある。
「原則として、補助事業計画に記載のない新しい費目の追加はできません」という制約があるため、採択後に「この費目も追加したい」と変更することは事実上難しい。導入する予定のAIツール・システムと、それを使った取組内容を申請段階で書いておく必要がある。
業務効率化(生産性向上)の取組として申請する場合
公募要領はPOSソフトについて「3.業務効率化(生産性向上)の取組内容に記載した場合に限る」と条件を付けている。業務効率化目的でAIツールを導入する場合も、申請時の補助事業計画に業務効率化の取組として明記しておく必要がある。
公募要領はさらに「業務効率化(生産性向上)の取組による経費支出は、あらかじめ申請時に所定の様式内に内容を記載し、『経費明細表』に計上していることが前提条件となります。いずれも、変更承認手続により事後に補助対象経費に加えることはできません」と明示している。後から追加できないという制約は、申請前に把握しておくべき重要な点だ。
支払い方法の制約
補助事業の支出は原則銀行振込方式で行う。1取引10万円(税抜き)を超える現金支払いは補助対象外だ。サブスクリプション型のAIツールをクレジットカードで支払う場合は、申請する事業者名義のカードを使い、金融機関等からの引き落としが補助事業期間内に完了していることが条件となる。代表者や従業員の個人カードで支払った場合は「立替払い」として、帳簿等で確認できない場合には補助対象外になる。
採択後に続く実績報告と事業化状況報告
採択・交付決定は出発点に過ぎない。補助事業終了後には実績報告書と支出証拠書類を定められた期日までに提出しなければならない。期日を過ぎれば、交付決定を受けていても補助金を受け取れなくなる。
筆者は事業再構築補助金第6回に採択(2023年9月)された後、実績報告で差し戻しが繰り返し発生し、対応は2023年10月から2024年8月まで続いた。精算払いの完了は2024年9月だ。以後も毎年、事業化状況報告の提出義務がある。
IT導入補助金のITツール登録を進めた際も、書類の不備で6回差し戻された経験がある。差し戻しは内容の優劣ではなく、必須項目が公募要領のフォーマットどおりに揃っているかの機械的な照合で起きることが多い。以降は指摘が来てから直す方式をやめ、提出前に公募要領のチェックリストで全項目を一括点検する手順に切り替えた。
持続化補助金でAIツールを申請した場合も、実績報告で問われる内容は同じだ。公募要領は「機械装置等を購入したものの、補助事業終了までに当該機械装置等を使用して補助事業計画に記載した販路開拓等の取組を行っていない場合には、当該機械装置等の購入費は補助対象外となります」と明示している。AIツールを契約・導入するだけでは足りず、それを使って計画に書いた取組を実際に行い、実績報告書にその記録を残す必要がある。
申請可否のチェックリスト
| 確認項目 | 判断の基準 |
|---|---|
| 経費区分は何か | 既製ソフト購入→機械装置等費、システム開発・構築→ウェブサイト関連費、外部開発委託→委託・外注費 |
| 汎用性はあるか | 他業務・他用途に転用できるなら対象外になる可能性がある |
| 補助事業計画に記載があるか | 計画外の費目は事後に追加できない |
| 交付決定後に発注・契約するか | 交付決定日前の支出は全額対象外 |
| 補助事業期間内に稼働するか | 期間内に実際に使用しなければ補助対象外 |
| 支払い方法は銀行振込か | 現金支払いは1取引10万円(税抜き)超で対象外 |
| 2者以上の見積りが揃うか | 発注総額100万円超(税込)は相見積必須 |
| 既存サービスの更新料ではないか | 既に導入済みのソフトウェアの更新料は対象外 |
出典
- 小規模事業者持続化補助金<一般型> 第16回公募要領(商工会議所地区):https://s23.jizokukahojokin.info/doc/s23_koubo16_13.pdf
- 中小企業庁 小規模事業者持続化補助金:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/jizoku/
- 商工会議所地区 補助金事務局(次回公募情報確認先):https://official.jizokukanb.com/
よくある質問
Q. ChatGPTやCopilotの月額プランは持続化補助金の補助対象になりますか?
A. 対象外になる可能性が高いです。公募要領では機械装置等費の対象外として「汎用性が高く目的外使用になりえるもの」が明記されています。ChatGPTやCopilotは業種・用途を問わず使えるサービスのため、この基準に該当しやすいと判断されます。申請前に担当の商工会議所へ確認することを勧めます。
Q. AIシステムを開発する費用は「機械装置等費」と「ウェブサイト関連費」のどちらで申請しますか?
A. 公募要領に「ウェブサイト、システム開発等に関連するソフトウェアは、ウェブサイト関連費で計上してください」と明記されています。AIを活用したシステムの開発・構築はウェブサイト関連費が基本です。既製の特定業務用ソフトウェアをパッケージとして購入する場合は機械装置等費が対象となります。
Q. 採択通知が届いたら、すぐにAIツールの契約を始めてよいですか?
A. いいえ。採択通知書だけでは補助事業を開始できません。公募要領に「『補助金交付決定通知書』に記載された交付決定日から」でなければ発注・契約・支出行為は補助対象外と明記されています。採択通知と交付決定通知書は別の書類です。交付決定通知書を受け取ってから契約してください。
Q. AIツールの月額利用料を補助事業期間中分だけ申請することはできますか?
A. 按分自体は可能です。公募要領では「契約期間が補助事業期間を越えるソフトウェア使用権を購入する場合は、按分等の方式により算出された補助事業期間分のみ補助対象となります」と定めています。ただし前提として、そのツールが「汎用性が高く目的外使用になりえるもの」に該当しないことと、補助事業計画に記載があることが必要です。
この記事で取り上げている制度
上限額・補助率・締切は、それぞれの制度ページにまとめています。 要件は公募回ごとに変わるため、申請の判断は必ず公式の公募要領で確かめてください。
公式の公募要領:持続化補助金
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