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番外編『世界の補助金から』

EV優遇をやりすぎた国——ノルウェーが免除した税金と、いま起きている見直し

執筆:小嶋 譲司株式会社TOE 代表取締役 読了 約6情報時点:2026年8月13日
EV優遇をやりすぎた国——ノルウェーが免除した税金と、いま起きている見直し

結論

  • ノルウェーは電気自動車(EV)の購入時にかかる非経常的な車両諸税(登録税など)と25%の付加価値税(VAT)を全額免除し、さらに年間の道路税、公共駐車場の駐車料金、通行料(トール)も免除してきました。2013年時点ではこの免除により、Nissan Leafの価格(240,690クローネ、約4万2,500米ドル)がガソリン車であるVW Golf 1.3リットル(238,000クローネ、約4万2,000米ドル)とほぼ並ぶ水準になっていました。
  • この優遇の結果、新車販売に占めるプラグイン車の比率は2016年に29.1%、2020年に74.7%、2024年には88.9%に達しました。2020年にはノルウェーは電気自動車の年間販売台数が内燃機関車の合計販売台数を初めて上回った世界最初の国になりました。
  • 一方で優遇の行き過ぎに対する批判が強まり、2015年に議会は2018年から一部優遇を縮小・段階的に廃止することで合意しました。バスレーンの混雑、フェリー事業者の減収、駐車スペース不足といった問題が指摘され、無料駐車やバスレーン利用の可否は地方自治体の裁量に委ねられるようになりました。

ノルウェーのEVはどこまで普及したのか

ノルウェーの人口当たりのプラグイン電気自動車(EV)保有台数は、世界で最も多いとされています。2016年12月、ノルウェーは道路を走る乗用車100台のうち5台がプラグイン車になった世界最初の国になりました。この比率は2018年10月に10%、2022年9月には25%に達しています。

新車販売におけるプラグイン車の市場シェアも急速に伸びました。2016年に29.1%、2017年に39.2%、2018年に49.1%、2019年に55.9%、2020年に74.7%、そして2024年には88.9%を記録しています。2020年には、電気自動車の年間販売台数が内燃機関車の合計販売台数を初めて上回った世界最初の国になりました。2024年1月時点では、電気自動車(BEVとPHEVの合計)の比率は93.9%(BEV92.1%、PHEV1.8%)に達しています。

2021年12月31日時点で、ノルウェー国内で使用されているプラグイン電気自動車の在庫台数は合計64万7,000台。内訳は全電気自動車(中古輸入車を含む)が47万309台、プラグインハイブリッド車が17万6,691台でした。ノルウェーは2016年から2018年まで3年連続でヨーロッパのプラグイン車販売台数トップの市場でもありました。歴代最多販売のプラグイン電気自動車はNissan Leafで、2020年までに6万5,500台超が登録されています。

2018年のマッキンゼー・アンド・カンパニーの分析では、ノルウェーはすでにEV普及の「臨界質量(クリティカルマス)」に達しており、世界で唯一、破壊的トレンドの第3段階にある国とされました。また、ノルウェーの電力の約98%は再生可能エネルギー(主に水力発電)由来であるため、同国の電気自動車の保有構成は世界でも最もクリーンなものの一つとされています。2017年には、急速なEV普及の結果として、新車の平均CO2排出量に関する気候目標(85g/km)を、公約より3年早く達成しました。

何を、どこまで免除してきたのか

ノルウェー政府は1990年代からEVの普及を政策的に後押ししてきました。議会は当初、2018年までにゼロエミッション車を5万台にするという目標を掲げていました。

全電気自動車と商用バンは、登録税をはじめとする非経常的な車両諸費用と、購入時にかかる25%のVATを全額免除されます。ガソリン車にかかる登録税は非常に高額であるため、この免除によって電気自動車の購入価格はガソリン車と競合できる水準になりました。2013年初頭の例では、当時最も売れていたNissan Leafの価格は24万690クローネ(約4万2,500米ドル)で、1.3リットルのVW Golf(23万8,000クローネ、約4万2,000米ドル)とほぼ同水準でした。

このほか電気自動車は、年間の道路税、すべての公共駐車料金、通行料(トール)の支払いも免除され、バスレーンの通行も認められてきました。これらの優遇措置は、当初は2017年末まで、あるいは5万台という目標が達成されるまでという条件付きで導入されたものでした。

優遇の年表

導入・拡大された優遇
1990年輸入税の時限的な免除
1996年輸入税免除の恒久化、年間登録税の減額
1997年道路通行料(トール)の免除
1999年「EL」専用ナンバープレートの導入、公共駐車場での無料駐車
2000年会社所有車(社用車)税の減額
2001年VATをゼロパーセントに引き下げ
2003年オスロ地域でのバスレーン通行の許可
2005年バスレーン通行の恒久化・全国への拡大

なぜここまで手厚くしたのか

ノルウェー政府は、電気自動車をはじめとするゼロエミッション車の普及を政策目標として掲げてきました。2016年に策定された国家交通計画2018〜2029年(NTP)では、2025年までに新車販売、市バス、小型商用車のすべてをゼロエミッション車にするという目標が設定されました。この目標は、別の出典でも「2025年までのすべての新車販売がゼロエミッション車(電気または水素)であるべき」という国家目標として言及されています。

こうした政策と手厚い優遇の組み合わせにより、ノルウェーは2017年に新車の平均CO2排出目標を公約より3年早く達成するなど、目に見える成果を上げてきました。

手厚すぎたことで何が起きたか

普及策の成功は、同時にいくつかの意図せざる結果と批判も招きました。指摘されているのは、電気自動車の削減した炭素排出量の価値に対して、投じられた公的補助が過大であるという批判です。また、電気自動車の増加によってオスロの一部のバスレーンで交通混雑が生じる可能性、電気自動車が支払いを免除されることによるフェリー事業者の減収、そして電気自動車が優先されることによる、ガソリン車所有者向け駐車スペースの不足も問題として挙げられています。

見直しはいつ、どう始まったのか

2015年、ノルウェー議会は2018年から一部の優遇措置を縮小・段階的に廃止することで合意しました。あわせて、電気自動車を無料で駐車させるか、公共交通レーンを利用させるかどうかを判断する権限が、地方自治体に付与されました。これにより、それまで全国一律だった無料駐車やバスレーン利用の可否が、自治体ごとの裁量に委ねられる形に変わっています。

もともとこれらの優遇措置は、2017年末まで、あるいはゼロエミッション車5万台という目標が達成されるまでという条件付きで設計されたものでした。急速な普及によって優遇の前提条件そのものが早期に満たされ、かつ普及に伴う副作用が表面化したことが、2015年の議会決定の背景にあったといえます。

日本の制度を考えるうえで

ノルウェーの事例は、購入時の税・VAT免除に加えて通行料や駐車場、バスレーンといった利用面の優遇まで積み重ねた結果、普及率が急上昇する一方で、バスレーンの混雑やフェリー事業者の減収といった副作用も同時に生んだことを示しています。優遇策を設計する際に、期限や達成目標をあらかじめ組み込んでおくことの重要性を考えさせられる事例です。

出典

よくある質問

Q. ノルウェーのEVは何が免除されていたのですか?

A. 全電気自動車と商用バンは、登録税など非経常的な車両諸費用と購入時の25%のVATを全額免除されていました。加えて年間の道路税、公共駐車料金、通行料(トール)も免除され、バスレーンの通行も認められていました。

Q. ノルウェーのEV普及率はどのくらいですか?

A. 新車販売に占めるプラグイン車の比率は2016年に29.1%、2020年に74.7%、2024年には88.9%に達しました。2024年1月時点のEV(BEV+PHEV)比率は93.9%です。

Q. なぜ優遇策が見直されることになったのですか?

A. 電気自動車の削減効果に対して公的補助が過大だという批判に加え、オスロのバスレーン混雑、フェリー事業者の減収、駐車スペース不足が問題視されたためです。2015年に議会が2018年からの縮小に合意しました。

Q. 優遇の縮小は具体的にどう進んでいますか?

A. 2015年の議会合意により2018年から一部優遇の段階的廃止が始まり、無料駐車やバスレーン利用の可否を判断する権限が地方自治体に付与されました。全国一律だった優遇が自治体ごとの裁量に変わっています。

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