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人手不足に使える補助金・助成金の比較

執筆:小嶋 譲司株式会社TOE 代表取締役 読了 約9情報時点:2026年7月20日
人手不足に使える補助金・助成金の比較
この記事が扱う制度の公募状況

結論

人手不足対策には「設備投資でカバーする」アプローチと「人材の定着・確保でカバーする」アプローチの2方向があります。前者の代表は省力化投資補助金、後者の代表はキャリアアップ助成金人材確保等支援助成金です。多くの場合、両方を組み合わせて初めて効果が出ます。どちらか一方だけで解決しようとしないことが重要です。

人手不足対策は2方向で考える

人手不足への対応は、(1)機械化・自動化で必要な人手そのものを減らすアプローチと、(2)今いる人材の定着や新規採用を後押しするアプローチの2つがあります。前者は補助金、後者は助成金が中心となり、所管も経済産業省系と厚生労働省系に分かれます。

実務では、まず「なぜ人手が足りないのか」を切り分けるところから始めます。作業量に対して単純に人手が足りないのであれば設備投資で作業量そのものを減らす方向が効きますが、採用してもすぐ辞めてしまう、そもそも応募が来ないという場合は、設備を入れても離職が続けば効果は長続きしません。この切り分けを誤ると、せっかく補助金や助成金を使っても「人手不足感」が解消しないまま終わります。

比較表

制度名アプローチ上限額の目安向いているケース
省力化投資補助金設備投資による省人化カタログ型500万〜1,500万円、一般型最大1億円現場作業を機械化して必要人数を減らしたい
キャリアアップ助成金非正規雇用者の正社員化・処遇改善1人あたり最大80万円程度パート・契約社員の定着率を上げたい
人材確保等支援助成金雇用環境の整備コースにより数十万〜数百万円労働環境を整えて採用力を高めたい
業務改善助成金賃上げとセットの省力化投資最大600万円程度賃上げで採用力を上げつつ設備投資もしたい

それぞれの制度の特徴

省力化投資補助金

人手不足の解消そのものを目的とした設備投資への補助金です。カタログに登録された省力化製品から選ぶ「カタログ注文型」は比較的手続きが簡便で、中小企業でも取り組みやすいのが特徴です。一般型は上限が最大1億円まで広がる一方、事業計画の作成や審査のハードルも上がります。

2026年7月19日時点で、一般型は第7回公募が2026年7月1日から7月31日まで受付中です。カタログ型は500万〜1,500万円(賃上げ時)、一般型は最大1億円、補助率は原則1/2(小規模事業者・賃上げ実施時は2/3)となっています。締切から逆算すると、今から申請を検討する場合は準備期間が非常に短いため、まずは対象となる省力化製品や事業計画の骨子だけでも早めに固めておく必要があります。

申請の実務的な流れは、(1)自社の作業のうちどこを機械化・自動化できるかを洗い出す、(2)カタログ型で対応できる製品があるかを確認する、(3)対応できない場合は一般型で独自の設備投資計画を組み立てる、(4)交付候補者としての採択を受けてから契約・発注する、という順序になります。採択前に発注してしまうと補助対象外になる点は特に注意が必要です。

キャリアアップ助成金

パートや契約社員などの非正規雇用労働者を正社員に転換したり、処遇を改善したりした事業主に支給されます。「正社員化コース」が代表的で、離職率の高さが人手不足の一因になっている場合、雇用の安定化によって間接的に人手不足を緩和する効果が期待できます。

令和8年度は通年・随時受付で、正社員化コースの支給額は重点支援対象者・中小企業の場合で1人あたり最大80万円程度が目安です。申請の流れは、(1)就業規則・キャリアアップ計画書を整備する、(2)転換前に一定期間以上の雇用実績を作る、(3)実際に正社員転換を行う、(4)転換後の雇用継続を確認したうえで支給申請する、という段階を踏みます。就業規則の整備やキャリアアップ計画の事前提出を後回しにすると、実際に正社員転換をしても助成金の対象外になってしまうため、制度の要件は転換を実施する前に必ず確認しておく必要があります。

人材確保等支援助成金

雇用管理制度の整備、テレワーク環境の整備、外国人労働者の就労環境整備など複数のコースに分かれています。「採用してもすぐ辞めてしまう」「そもそも応募が来ない」といった課題に対して、働きやすい環境を整えることで採用力・定着力を高める狙いがあります。

コースが複数に分かれているため、まず自社の課題がどのコースに合致するかを整理することが最初の作業になります。離職率の高さが課題であれば雇用管理制度の整備系コース、働き方の柔軟性が課題であればテレワーク関連コースというように、課題と制度の対応関係を明確にしてから計画書を作成すると、審査の際にも説明がしやすくなります。

業務改善助成金

事業場内最低賃金の引き上げと設備投資をセットで行う事業主向けの助成金です。上限は最大600万円程度で、賃上げ額や引き上げ対象人数、事業場内最低賃金の水準によって上限額と補助率(3/4〜4/5)が変わります。令和8年度は2026年9月1日から公募開始予定です。

最低賃金の引き上げが避けられない状況にあるなら、単に賃上げの負担を受け止めるだけでなく、業務改善助成金を使って省力化のための設備投資も同時に行うことで、賃上げ後も採算が取れる体制を作りやすくなります。人手不足対策としては、賃上げによって採用力を上げつつ、設備投資で必要人数そのものを減らすという二重の効果を狙える点が特徴です。

判断基準

実務上は、設備投資で作業負荷を下げつつ、並行して助成金で人材の定着を図る組み合わせが最も現実的です。設備投資だけ、あるいは雇用施策だけで人手不足が一気に解消するケースは多くありません。

判断に迷う場合は、次の順序でチェックすると整理しやすくなります。まず離職率と応募数のどちらが深刻かを数字で確認する。次に、離職が深刻であれば処遇・環境系の助成金を優先し、応募自体が来ないのであれば採用力を上げる施策と設備投資を並行して検討する。最後に、いずれの場合も設備投資による省力化は長期的な人手不足の緩和に効くため、資金繰りが許す範囲で早めに着手を検討する、という順番です。

併用の考え方

省力化投資補助金(経産省系)とキャリアアップ助成金・人材確保等支援助成金(厚労省系)は所管が異なり対象経費も重複しないため、要件を満たせば同時並行で取り組むことが可能です。業務改善助成金は厚労省系ですが、設備投資費用が対象経費に含まれるため、省力化投資補助金と対象経費が重ならないよう、どちらの制度でどの設備を計上するかを事前に整理しておく必要があります。

スケジュール面でも注意が必要です。2026年7月19日時点で、省力化投資補助金(一般型)は第7回公募が2026年7月31日締切と目前に迫っています。一方、業務改善助成金は2026年9月1日から公募開始予定、キャリアアップ助成金は通年受付です。設備投資は締切のある補助金から逆算してスケジュールを組み、人材施策は通年受付の助成金を使って並行して進める、という時間軸の使い分けが実務的です。

申請までの実務フロー

複数制度を組み合わせる場合、進め方を誤ると片方の準備に追われてもう片方の締切を逃すということが起こります。次の順序で進めると整理しやすくなります。

  1. 現状把握:離職率、応募数、現場の作業負荷を数値で把握する(担当:経営者・現場責任者、目安1〜2週間)
  2. アプローチの仮決め:設備投資と人材施策のどちらを主軸にするか、比較表を参考に仮決めする
  3. 専門家への相談:社会保険労務士(助成金)、中小企業診断士や商工会議所(補助金)にそれぞれ相談する
  4. 締切からの逆算:公募中・公募予定の制度の受付期間を確認し、準備に必要な期間を逆算する
  5. 書類準備と申請:事業計画書、就業規則、賃金台帳など、制度ごとに必要な書類を並行して準備する

このうち専門家への相談は早いほど良く、特に助成金は就業規則の整備など「事前に済ませておかないと対象外になる」要件が多いため、正社員転換や賃上げを実施する前の段階で相談しておくことが重要です。

ありがちな失敗と回避策

  • 設備投資だけで解決しようとする:機械化で作業量を減らしても、離職が続けば人手不足感は解消しません。設備投資と並行して定着施策も検討することが重要です。
  • 助成金の事前要件を後回しにする:キャリアアップ助成金の正社員化コースは、就業規則やキャリアアップ計画の整備を転換前に済ませておく必要があります。転換してから慌てて整備しても対象外になります。
  • 締切直前に動き出す:省力化投資補助金のように公募期間が1か月程度しかない制度もあります。2026年7月19日時点で一般型第7回は7月31日締切のため、検討自体をこれから始める場合は次回公募を待つ判断も含めて早めに方針を決める必要があります。
  • 複数制度で対象経費を重複計上する:省力化投資補助金と業務改善助成金はどちらも設備投資を対象経費に含められる場合があるため、同じ設備を両方に計上しないよう、経費の切り分けを事前に整理しておく必要があります。
  • 採択を前提に発注してしまう:補助金は交付候補者としての採択を受けてから契約・発注するのが原則です。採択前に発注すると補助対象外になるケースがあるため、着手のタイミングは必ず制度ごとの手引きで確認してください。

なお、ものづくり補助金の直近5回平均の採択率は34.6%(第22次時点、2026年7月19日時点データ)にとどまっており、同種の設備投資系の補助金は「申請すれば通る」ものではないことがうかがえます。省力化投資補助金についても、採択されなかった場合の代替案(次回公募を待つ、自己資金での小規模投資に切り替える等)をあらかじめ用意しておくと、計画が止まりにくくなります。

スケジュール管理のチェックリスト

確認項目内容目安タイミング
課題の切り分け離職率・応募数・作業負荷のどれが深刻か数値で確認検討開始時
制度の仮決め比較表を参考に主軸となる制度を仮決め検討開始から1週間以内
専門家相談社労士・中小企業診断士・商工会議所への相談申請の1〜2か月前
締切確認公募中・公募予定の制度の受付期間を確認常時(制度ごとに変動)
対象経費の整理複数制度を併用する場合の経費の重複がないか確認書類作成前
事前要件の充足就業規則整備など、実施前に必要な要件を満たしているか施策実施前

自社だけで判断がつかない場合

比較表や判断基準を見ても、どの制度から着手すべきか自社だけでは決めきれないケースもあります。その場合は、補助金であれば商工会議所・商工会や中小企業診断士、助成金であれば社会保険労務士に、現状の課題(離職率・応募数・作業負荷の数値)を持って相談するのが近道です。専門家に相談する際は、比較表のどの行に自社が当てはまりそうかをあらかじめ仮決めしておくと、相談の時間を短縮できます。

また、社内に複数の課題(例えば離職も応募不足も設備の老朽化もある)が同時に存在する場合は、一度にすべてを解決しようとせず、最も深刻な課題から着手する順序を決めることも重要です。優先順位を付けずに複数制度へ同時に手を広げると、どの制度についても書類準備が中途半端になり、結果的にどれも間に合わなくなるという事態を招きやすくなります。

まとめ

人手不足対策は、設備投資による省人化と、人材の定着・確保という2つのアプローチを組み合わせて考えるのが基本です。省力化投資補助金は締切のある公募制のため、まず受付期間を確認したうえで準備を進める必要があります。一方でキャリアアップ助成金や人材確保等支援助成金は通年受付が中心のため、設備投資の準備と並行して着手しやすい制度です。どちらか一方に偏らず、自社の課題がどちらのアプローチに近いかを見極めたうえで、複数制度の併用を前提にスケジュールを組むことが、実務上もっとも現実的な進め方になります。

よくある質問

Q. 省力化投資補助金とキャリアアップ助成金は同時に申請できますか?

A. 省力化投資補助金は経済産業省系、キャリアアップ助成金は厚生労働省系で所管が異なり、対象経費も重複しないため、要件を満たせば同時並行での申請が可能です。ただし業務改善助成金のように設備投資費用を対象経費に含む助成金と併用する場合は、同じ設備を両方に計上しないよう経費の切り分けに注意してください。

Q. 省力化投資補助金の締切はいつですか?

A. 省力化投資補助金の一般型は、第7回公募が2026年7月1日から7月31日までの受付で締切済みです(次回は未公表)。カタログ型は500万〜1,500万円、一般型は最大1億円と上限額が異なるため、公式の公募要領で自社が該当する型の受付期間と要件を必ず確認してください。

Q. キャリアアップ助成金の正社員化コースはいくらもらえますか?

A. 令和8年度時点で、キャリアアップ助成金の正社員化コースは重点支援対象者・中小企業の場合、1人あたり最大80万円程度が目安です。就業規則の整備やキャリアアップ計画書の事前提出を転換前に済ませておかないと、転換後に申請しても対象外になるため注意が必要です。

Q. 補助金は申請すれば必ず採択されますか?

A. 必ず採択されるわけではありません。参考として、ものづくり補助金の直近5回平均採択率は34.6%(第22次時点、2026年7月19日時点データ)にとどまっています。省力化投資補助金でも、不採択の場合に次回公募を待つか自己資金に切り替えるかなど、代替案をあらかじめ検討しておくことが重要です。

この記事で取り上げている制度

上限額・補助率・締切・公式の公募要領へのリンクは、それぞれの制度ページにまとめています。

この制度は、AI・システムの導入にも使えます対象になる経費とならない経費、落ちる計画の共通点を整理しました。

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